冊子印刷といえば、A4やB5などの定型サイズが一般的ですが、最近では「正方形」「横長」「縦長」などの変形サイズの冊子が注目されています。見た目のインパクトやブランド表現の自由度が高く、企業パンフレットや絵本、ノベルティなど幅広い用途で活用されています。
しかし、変形サイズの冊子を作成するには、通常の冊子印刷とは異なる注意点がいくつもあります。今回は、冊子デザインから入稿、印刷までの流れを、変形サイズならではの視点で詳しく解説します。
変形サイズの冊子とは?定型サイズとの違い
「変形サイズの冊子」とは、JIS規格で定められたA判・B判以外の寸法で仕上げる冊子のことです。具体的には以下のようなサイズがあります。
| 変形サイズの例 | 寸法(mm)※仕上がりサイズ | 用途例 |
|---|---|---|
| 正方形冊子(スクウェア冊子) | 210mm×210mm等 | 絵本、写真集、ノベルティ |
| 横長冊子 | 縦210mm×横297mm等 | 会社案内・製品紹介 |
| 変形縦長冊子 | 縦210mm×横100mm等 | レシピ集、商品カタログ |
| 特殊寸法 | 縦180mm×横250mm等 | ブランドパンフレット等 |
定型サイズでは表現しきれない世界観や機能性を持たせることができるのが、変形サイズの魅力です。
変形サイズ冊子のメリットとデメリット
変形サイズの冊子は見た目も特徴的になり、手にした方の興味を引く冊子となります。
非常に魅力的な冊子ではありますが、変形サイズの冊子を作成する上で考えられる、メリットとデメリットをいくつかご紹介いたします。
| メリット |
|---|
| 視覚的インパクトが強い |
| 他の冊子と並んだときに目を引きやすく、イベントや展示会での配布物に最適。 |
| ブランドイメージを強化できる |
| 独自サイズを採用することで、企業や商品の世界観を印象づけることが可能。 |
| 用途に合わせた設計が可能 |
| 横長サイズは横スクロール型のストーリー展開に、縦長サイズは縦に情報を並べたい場合に最適。 |
やはりメリットとしては一般的な定型サイズの冊子にはないインパクトを受け取った方に感じてもらえるという部分が大きくなります。また、業務のフローなどを掲載する会社案内では、縦型の冊子よりも横型にする事で見やすくなるという場合もあります。また、不動産関係の冊子や車の販売のカタログなど、写真やパース画を大きく使用したい時にも横長の冊子は好んで使用されます。
| デメリット |
|---|
| 印刷コストが高くなる場合がある |
| 用紙の取り都合が悪く、紙のロスが出ることでコストが上がる可能性あり。 |
| 製本・断裁が複雑になる |
| 断裁位置や塗り足しの設定に注意が必要。 |
| 入稿ミスが起きやすい |
| サイズ設定やトンボの位置などを自分で調整する必要があり、慣れていないとミスにつながる。 |
デメリットとしては、ある程度の範囲内であれば自由なサイズで冊子を作成できる反面、サイズ次第では冊子の単価が割高になってしまう事があります。基本的にはA4定型サイズ内に収まる範囲であれば、そこまで割高にはならない、というラインもありますので、外注業者へ相談してみるといいでしょう。
冊子デザイン時の注意点(Illustrator編)
変形サイズの冊子を作成する際は、作成するサイズ等を比較的自由に設定が出来る、IllustratorなどのDTPソフトを使うのが一般的です。illustratorデータで冊子データを作成する場合に押さえておきたいポイントをいくつかご紹介いたします。
| 1. アートボードの設定 | 仕上がりサイズ+塗り足し(通常3mm)を含めたサイズで設定 例:仕上がり180×180mm → アートボード186×186mm。 |
| 2. トンボ(トリムマーク)の配置 | 断裁位置を明示するために必ずトンボを付ける。 |
| 3. ノド側・地側の揃え方 | 縦を短くする冊子は「地側」、横を短くする冊子は「ノド側」を基準に揃えると断裁ズレを防げる。 |
| 4. 見開きデザインの注意 | 中綴じや無線綴じの場合、綴じ位置付近の文字やデザインが見えづらくなるため、余白を十分に取る。 |
illustratorを普段から使い慣れている方であれば、特に難しい作業ではありませんが、ページ数が多くなると見落としがちなミスも増えてきます。最終の入稿データでは文字のアウトライン化や画像のリンクなどのチェックも行うようにしましょう。また、作業の工程上でかけていたレイヤーやオブジェクトのロック解除もお忘れなく。
Illustratorがない場合の代替ツール
変形サイズの冊子を作成したいけど、上記のillustratorのようなデザインソフトはもっていない・・・という方も多いと思います。デザイナーさんや印刷会社などでは一般的なソフトですが、購入すると高額になってしまうソフトですので、一般の方のパソコンに入っているかというと・・・おそらく普及率は低いかと思います。
そこで無料のツールで変形サイズの冊子を作製できるツールをいくつかご紹介いたします。
Canva(キャンバ)
Canva(キャンバ)は今では一般的になってきた誰でも使用できる無料デザインツールです。パソコンが無くてもスマホがあれば自由にデザインを作成出来る便利なツールとなり、サイズ設定も自由に設定が可能です。(無料版ではデータ作成途中でサイズの変更が出来ない場合がありますので注意が必要です)
また、最終のデータはPDFの形式で保存する事で、印刷会社へ入稿する事が可能です。
※Canva(キャンバ)を使用する場合の注意点
Canvaでデータを作成する場合にはいくつか注意をしなくてはいけないポイントがあります。
■データの作成サイズと仕上がりトンボ
上記でも説明した通り、フチなし印刷を行う場合は四方に最低でも3mmの塗り足しが必要となります。フチまで印刷を行いたい場合は四方3mmを追加したサイズで作成する必要があります。Canvaで作成したデータを保存する際に、自動で塗り足しとトンボを入れる事も出来ますが、配置した写真やイラストについては印刷範囲外まで指導で広がりません。A4サイズ(210mm×297mm)の仕上がりであれば、(216mm×303mm)で作成し、切れてはいけない部分などはA4サイズよりも内側へ配置する必要があります。
Canvaについてはレスキュープリントのスタッフが使用してみて感じた事などを以下のコラムにまとめていますので、一度お読みください。
Microsoft Word/PowerPoint
Canvaはまだ比較的新しいデザインツールですので、なかなか馴染みが無いかもしれません。その場合、使い慣れた馴染みがあるソフトとしてオフィス系ソフトと呼ばれる、WordやPowerPointがあります。
これらのツールもでもスライドサイズやページサイズをカスタムできるため、変形のデータを作成する事は可能です。また、画像の配置やテキストの入力もPCがあれば比較的簡単に行う事が出来ます。また、エクスポートを使用する事でPDFデータへの変換も簡単に行う事が出来ます。しかし、オフィス系のデータは作成したパソコンなどの環境に左右されやすいデータとなりますので、PDFへ変換する際には、作成した環境でPDFへ変換する事をおススメいたします。
※オフィス系データで作成する場合の注意点
オフィス系データで作成する場合、塗り足しや仕上がりトンボを付ける作業は非常に難しくなります。データの作成前に印刷会社へ相談し、データの作成方法を打ち合わせするようにしましょう。また、オフィス系で作成されたデータは「RGB」というカラーモードとなります。印刷機のカラーモードは基本的に「CMYK」となりますので、少し難しくなりますが、実際にパソコンで見ている色と印刷した際の色が変わってしまう、という不思議な現象が起きてしまいます。
印刷会社によってはRGBの色配合に近づける形で印刷をしてくれる場合もありますので、こちらも事前に相談しておくことをお勧めします。
入稿時の注意点とチェックリスト
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| サイズ設定 | 仕上がりサイズ+塗り足しを含めたサイズで作成されているか |
| トンボ | トリムマークが正しく配置されているか |
| フォント | PDFにフォントが埋め込まれているか |
| カラーモード | CMYKで作成されているか(RGBの場合は印刷会社に確認) |
| ページ順 | ファイル名やページ順が明確か(例:01_表紙、02_本文1) |
| 圧縮形式 | フォルダにまとめてZIP形式で圧縮されているか |
変形サイズ冊子の活用シーン
定型サイズではない変形の冊子は様々なサイズで様々な用途で使用されます。
| 絵本・写真集に |
|---|
| 正方形や横長サイズは、ページ全体を使ったビジュアル表現に向いている |
| 子ども向け絵本やポートフォリオに最適 |
| ブランドパンフレット |
|---|
| 独自サイズで企業の世界観を演出 |
| 高級感や差別化を図りたい場合に効果的 |
| レシピ集・商品カタログ |
|---|
| 画像の向きに応じた冊子のサイズで見やすく |
| 持ち運びしやすいサイズで配布用に |
| ノベルティ冊子 |
|---|
| イベントなどで配布する際に便利なサイズに |
| 小さな中綴じタイプのポイントカードにも |
変形サイズの冊子は「伝える力」を高める選択肢
変形サイズの冊子は、ただの“変わり種”ではなく、目的に応じた最適な表現手段です。もちろん、制作には定型サイズ以上の注意が必要ですが、それを乗り越えた先には、他にはない魅力的な冊子が待っています。
印刷会社との連携やテンプレートの活用、そして事前の設計をしっかり行うことで、変形サイズの冊子制作はぐっと身近になります。ぜひ、次の冊子制作の選択肢として検討してみてください。
店舗でのお引き取りや打ち合わせも可能です
レスキュープリントは岐阜県(岐阜市)と愛知県(名古屋市・一宮市)で合計3店舗を展開しています。東海地区のお客様に関しては店頭にて直接スタッフとご相談、打ち合わせが可能です。最寄りの店舗へお電話頂き、ご来店頂く日時をお伝えいただければスタッフが対応いたします。
尚、配送による全国対応も可能です。お気軽にお問い合わせください。

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Profile:
坂下大輔
コピンピア一筋21年。会社随一のアイデアと閃きで、社内外に向けたいくつもの企画を成功に導き社長賞を何度も受賞。知識よりも感覚で仕事をするのが好きで、簡単なデザインならデザイナーに依頼せずに自分で作成してしまうことも。社員旅行では宴会ではしゃぎ過ぎる一面も持ちながら、息子の影響でFC岐阜とお寺巡りにはまっている。日本酒が大好きなのに焼酎が飲めないという変わったお酒好き。

