印刷物を作成する際に「どの用紙を選ぶか」は、仕上がりの印象を大きく左右する重要なポイントです。特に冊子印刷やパンフレット印刷、チラシ印刷などでよく使われるのが「コート紙」と「マットコート紙」。どちらも表面に特殊な加工が施されており、一般的な上質紙とは異なる仕上がりになります。
「コート紙は鮮やか」「マットコート紙は落ち着き」といったイメージは広く知られていますが、実際にどのような場面で使い分けるべきなのか、具体的な事例を交えて解説していきます。
コート紙とは？
コート紙は、表面に光沢のあるコーティングを施した紙で、写真やカラー印刷に適しています。発色が鮮やかで、視覚的なインパクトを重視する印刷物に最適です。
| 特徴 |
|---|
| 色の再現性が高く、写真やグラフィックが美しく映える |
| 高級感や華やかさを演出できる |
| チラシなど、短時間で強い印象を与えたい印刷物に向いている |
マットコート紙とは？
マットコート紙は、光沢を抑えたコーティングを施した紙で、落ち着いた質感が特徴です。文字主体の印刷物に適しており、長時間読む資料や冊子に向いています。
| 特徴 |
|---|
| 光の反射が少なく、文字が読みやすい |
| 上品で柔らかい印象を与える |
| 長文や資料系の冊子に適している |
コート紙とマットコート紙の比較
筆記性に優れた上質紙とは違い、コート紙もマットコート紙もどちらも表面にコーティングが施された「塗工紙（とこうし）」という分類になります。表面にコーティングが施されている分、どちらの用紙も筆記という面に関しては想定していない用紙となります。わかりやすく特徴を比較表にすると以下の通りとなります。
| 項目 | コート紙 | マットコート紙 |
|---|---|---|
| 表面加工 | 光沢あり | 光沢を抑えたマット仕上げ |
| 発色 | 鮮やかで写真向き | 落ち着いた色合いで文字向き |
| 読みやすさ | 光の反射で文字が見づらい場合あり | 反射が少なく文字が読みやすい |
| 印象 | 華やか・高級感 | 上品・落ち着き |
| 主な用途 | チラシ、カタログ | パンフレット、会社案内、教材 |
また、意外と知られていないのは同じ連量でもコート紙とマットコート紙では厚みが微妙に違うという事です。紙の「連量」とは、ある規定サイズの紙を1,000枚（＝1連）積み重ねたときの重さをキログラムで表したものです。数値が大きいほど厚く重い紙、小さいほど薄く軽い紙を意味します。
紙1枚の厚みは微々たるものですが、例えばコート90ｋを使用した200頁（100枚）の冊子の本文の厚みが8ｍｍなのに対し、マットコート紙90kを使用した場合には11mmと、3ｍｍの違いが出る事になります。コート紙よりもマットコート紙の方が若干しっかりしているとイメージしておくといいでしょう。
事例で見る使い分けのポイント
事例①：会社案内冊子
新卒採用向けに会社案内冊子を作成。表紙には企業理念を象徴する鮮やかな写真を配置し、コート紙を使用。
光沢のある仕上がりで、学生に「華やかで勢いのある会社」という印象を与えることができました。
一方、本文はマットコート紙を選択。社員インタビューや事業説明など文字情報が多いため、反射の少ないマットコート紙にすることで読みやすさを確保しました。結果として「見栄えと読みやすさの両立」が実現しました。
事例②：イベントパンフレット
地域の音楽フェスティバルで配布されたパンフレットでは、出演者の写真やステージのビジュアルが多く掲載されていました。そのため全面的にコート紙を採用。写真の鮮やかさが際立ち、来場者に強い印象を残しました。
ただし、タイムテーブル部分は文字が多く、光沢で見づらいという声もありました。次回は「本文はマットコート紙に切り替える」ことで改善を検討しています。
事例③：教材冊子
学習塾で、受講生に配布する教材冊子をマットコート紙で作成しました。長時間読むことを前提にしているため、反射が少なく目に優しいマットコート紙が最適でした。
表紙だけはコート紙を使い、鮮やかなデザインで「学習意欲を高める」効果を狙いました。結果として「表紙は華やか、本文は読みやすい」というバランスの良い冊子が完成しました。
筆記性が無いということでしたので、教材とは別に書き込み用のノートも作成しました。
事例④：商品カタログ
アパレルブランドでコレクションのカタログを制作。商品写真を美しく見せるために全面コート紙を採用しました。光沢のある仕上がりで、服の質感や色味が鮮やかに再現され、ブランドイメージを高める効果がありました。
ただし、価格表や商品説明の文字部分はやや読みにくくなるため、別冊の「価格リスト」をマットコート紙で作成し、補完する工夫を行いました。
事例⑤：記念誌・卒業アルバム
学校の卒業記念誌では、写真ページはコート紙を使用し、鮮やかで華やかな印象を演出。
一方で、卒業生の作文や先生方のメッセージページはマットコート紙を採用し、落ち着いた読みやすさを確保しました。同じ冊子の中で紙を使い分けることで、写真と文字の両方を最適に見せることもできます。
コート紙とマットコート紙の違いについてのよくある質問
最後にまとめとなりますが、コート紙とマットコート紙の違いについて、Q&A方式でご紹介させて頂きます。
| Q1. コート紙とはどんな紙ですか？ |
| コート紙は表面に光沢加工が施された紙で、写真やカラー印刷に適しています。発色が鮮やかで、チラシやポスター、カタログなど視覚的インパクトを重視する印刷物に最適です。 |
| Q2. マットコート紙とはどんな紙ですか？ |
| マットコート紙は光沢を抑えた加工が施された紙で、落ち着いた質感が特徴です。文字主体のパンフレットや会社案内、教材など、読みやすさを重視する印刷物に向いています。 |
| Q3. コート紙とマットコート紙の違いは？ |
| コート紙は「鮮やかで華やか」、マットコート紙は「落ち着いて読みやすい」という違いがあります。写真中心ならコート紙、文字中心ならマットコート紙を選ぶのが基本です。 |
| Q4. 冊子印刷ではどちらを選ぶべきですか？ |
| 表紙はコート紙で華やかに、本文はマットコート紙で読みやすくする組み合わせがよく選ばれます。用途やデザインに応じて使い分けるのがポイントです。文章がメインとなる冊子については本文を上質紙で印刷するのもコストを抑えるポイントです。 |
| Q5. どんな場面で使い分けると効果的ですか？ |
| 会社案内や教材冊子では「表紙＝コート紙」「本文＝マットコート紙」が効果的。イベントパンフレットや商品カタログでは写真が多いため全面コート紙が選ばれることもあります。表現したいイメージや写真やイラストのイメージなどに応じて使い分ける事がおススメです。 |
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冊子印刷において「綴じ方の選び方」は、見落とされがちなポイントですが、実は読者の体験を左右する重要な要素です。長辺綴じ・短辺綴じの違いを理解し、用途に応じた最適な選択をすることで、より魅力的で機能的な冊子が完成します。
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Profile：
坂下大輔
コピンピア一筋21年。会社随一のアイデアと閃きで、社内外に向けたいくつもの企画を成功に導き社長賞を何度も受賞。知識よりも感覚で仕事をするのが好きで、簡単なデザインならデザイナーに依頼せずに自分で作成してしまうことも。社員旅行では宴会ではしゃぎ過ぎる一面も持ちながら、息子の影響でFC岐阜とお寺巡りにはまっている。日本酒が大好きなのに焼酎が飲めないという変わったお酒好き。