
冊子の「製本」とは?
冊子印刷を検討する際、「製本」という言葉に触れる機会は多いと思います。けれども、「製本って具体的に何をする工程?」「どんな種類があるの?」と疑問に感じる方も少なくありません。
製本は、印刷された用紙を一冊の冊子として仕上げるための最終工程。見た目の美しさだけでなく、使いやすさや耐久性にも関わる重要なステップです。
今回は「冊子の製本」をテーマに、製本の種類や特徴、主な用途、そして製本工程で気を付けたいポイントまで、わかりやすく解説していきます。
製本とは?冊子づくりの仕上げ工程
製本とは、印刷された複数枚の用紙を順番通りにまとめ、綴じて一冊の冊子に仕上げる工程のことです。印刷物が「情報」だとすれば、製本はそれを「使える形」にするための仕上げ。まさに冊子づくりの最終段階です。
主な製本の種類と特徴
冊子印刷でよく使われる製本方法には、以下のような種類があります。
中綴じ製本(ホチキス綴じ)
特徴 | 用紙を二つ折りにして、中央をホチキスで綴じる方式。 |
ページ数 | 8~40ページ程度までが目安。 |
用途 | パンフレット、会報誌、取扱説明書、学校の冊子など。 |
メリット | コストが安く、開きやすい。 |
注意点 | ページ数が多いと中央が浮いてしまう。ノド(綴じ部分)に文字を配置しないよう注意。 |
無線綴じ製本(くるみ製本)
特徴 | 背を糊で固めて表紙でくるむ方式。 |
ページ数 | 40ページ以上に適している。 |
用途 | 報告書、学会誌、テキスト、マニュアルなど。 |
メリット | 厚みのある冊子に対応でき、背表紙ができる。 |
注意点 | 180度開きにくい。ノドにかかる文字や図版は避ける。 |
平綴じ製本(ホチキス止め製本)
特徴 | 用紙の端をホチキスで綴じる方式。 |
ページ数 | 少ページ向き(~20ページ程度)。 |
用途 | 社内資料、簡易マニュアル、テスト問題など。 |
メリット | 簡易で低コスト。 |
注意点 | 綴じ側が開きにくく、見開きのデザインには不向き。 |
上製本(ハードカバー製本)
特徴 | ボード紙に表紙を貼る本格的な製本。 |
ページ数 | 多くのページに対応可能。 |
用途 | 絵本、写真集、記念誌、上製本書籍など。 |
メリット | 耐久性が高く、長期保存に向いている。 |
注意点 | コストが高め。納期も長くなる傾向。 |
PUR製本
特徴 | 無線綴じの一種で、PUR(ポリウレタン系)接着剤を使用。 |
ページ数 | 厚みのある冊子、高耐久が求められる冊子。 |
用途 | 楽譜・絵本・エッセイ集・写真集 |
メリット | 接着力が強く、ページが剥がれにくい。 |
注意点 | 通常の無線綴じより納期が長くなる場合あり。 |
製本方法の選び方:用途と目的に合わせて
製本方法は、冊子の「使われ方」によって選ぶのが基本です。以下のような視点で検討すると、最適な方法が見えてきます。
用途 | おススメ製本方法 | 理由 |
---|---|---|
学校の配布冊子 | 中綴じ製本 | 開きやすく、低コスト |
報告書・マニュアル | 無線綴じ製本 | 多ページ対応、背表紙あり |
絵本・写真集 | 上製本・無線綴じ製本 | 耐久性と高級感 |
簡易資料 | 平綴じ製本 | 短納期・低予算に対応 |
また、冊子の厚みや開きやすさ、保存期間なども考慮すると、より満足度の高い仕上がりになります。
製本工程で気を付けたいポイント
製本は冊子の最終工程ですが、データ作成時から意識しておくべきポイントがあります。以下に、よくある注意点をまとめました。
①ノド(綴じ部分)への配置
中綴じや無線綴じでは、中央の綴じ部分(ノド)が見えづらくなります。文字や重要な図版は、ノドから5mm以上離して配置するのが理想です。
特に見開きで絵柄をつなげる場合、綴じ位置を意識してデザインしましょう。
② 塗り足しと断裁位置
製本後に断裁されるため、塗り足し(通常3mm)を必ず設けましょう。塗り足しがないと、断裁時に白フチが出てしまいます。
また、断裁位置に文字がかからないよう、余白を意識したレイアウトが重要です。
③ ページ順と面付け
製本方法によって、印刷時のページ配置(面付け)が変わります。中綴じではページ順が入れ替わるため、印刷会社が面付けを行う前提で、ページ順通りのデータを作成しましょう。
無線綴じでは、単ページで順番通りに並べたPDFが一般的です。
④ 表紙と本文のサイズ・紙質
表紙と本文で紙の厚みやサイズが異なる場合、製本時にズレが生じることがあります。特に無線綴じでは、表紙が本文を包む構造になるため、表紙サイズを本文より大きめに設定する必要があります。
また、紙質によって折りやすさや綴じやすさが変わるため、用途に応じた選定が重要です。
よくある製本の失敗例とその原因
① ノドに文字や図がかかってしまう
失敗内容 | 綴じ部分(ノド)に文字や図版が入り込み、読みにくくなる。 |
原因 | デザイン時に綴じ位置を考慮していない。特に無線綴じや中綴じで起こりやすい。 |
対策 | ノドから5mm以上は余白を確保。見開きデザインの場合は綴じ位置を意識して配置。 |
② 塗り足しがなく断裁で白フチが出る
失敗内容 | 断裁時に紙端に白い余白が出てしまい、見た目が悪くなる。 |
原因 | 塗り足し(通常3mm)を設けていない、または不十分。 |
対策 | 背景や写真が紙端まである場合は、必ず塗り足しを設定。IllustratorやInDesignではトンボ付きで作成。 |
③ ページ順が間違っている
失敗内容 | ページが飛んでいたり、順番が逆になっている。 |
原因 | 面付けの理解不足、またはPDFのページ順が誤っている。 |
対策 | 単ページPDFの場合は、ページ順通りに並べる。見開きデータの場合は、ファイル名にページ番号を明記。の場合は綴じ位置を意識して配置。 |
④ 表紙と本文のサイズが合っていない
失敗内容 | 表紙が本文より小さく、本文がはみ出してしまう。逆に表紙が大きすぎて不格好になることも。 |
原因 | 表紙と本文のサイズ設定ミス。特に無線綴じで起こりやすい。 |
対策 | 表紙は背幅を含めたサイズで作成。印刷会社のテンプレートを使用すると安心。 |
⑤ 紙が厚すぎて綴じられない
失敗内容 | 中綴じでページ数が多すぎて、ホチキスが閉じられない。冊子が開かない、浮いてしまう。 |
原因 | 紙厚とページ数のバランスが悪い。 |
対策 | 中綴じは40ページ程度までが目安。それ以上は無線綴じを検討。紙厚も薄めに調整。 |
⑥ 綴じ位置が逆(左綴じ・右綴じの間違い)
失敗内容 | 文面が縦型配置なのに左綴じになってしまい、読みづらい。 |
原因 | データ作成時に綴じ方向を誤認。特に英語と日本語の混在冊子で起こりやすい。 |
対策 | 縦文字は右綴じ(右開き)、横文字は左綴じ(左開き)が基本。入稿前に確認。 |
⑦ 背表紙の文字がズレている
失敗内容 | 背表紙のタイトルが中心からズレてしまい、見た目が悪い。 |
原因 | 背幅の計算ミス、または表紙データの配置ミス。 |
対策 | 背幅は「本文の総ページ数 × 用紙の厚み」で計算。 |
⑧ 表紙と本文の紙質がアンバランス
失敗内容 | 表紙がペラペラで安っぽく見える、または本文が厚すぎて開きにくい。 |
原因 | 紙質の選定ミス。用途に合っていない。 |
対策 | 表紙は厚め(135kg以上)、本文は薄め(70~110kg程度)が一般的。用途に応じて選定。 |
製本を制する者が冊子を制す
製本は、冊子の完成度を左右する重要な工程です。用途や目的に応じて製本方法を選び、データ作成時から綴じ方を意識することで、より美しく、使いやすい冊子が仕上がります。
レスキュープリント110番では、冊子印刷のプロが製本までしっかりサポート。冊子印刷をご依頼の際は、用途やページ数に応じて最適な製本方法をご提案いたします。初めての方でも安心してご利用いただけるよう、データ作成から入稿まで丁寧にサポートいたします。
また、製本に関するご相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。
「伝わる冊子」「使いやすい冊子」を目指して、ぜひ製本にもこだわってみてください。
レスキュープリントでは店舗での打ち合わせも可能です
レスキュープリントは岐阜県(岐阜市)と愛知県(名古屋市・一宮市)で合計3店舗を展開しています。東海地区のお客様に関しては店頭にて直接スタッフとご相談、打ち合わせが可能です。最寄りの店舗へお電話頂き、ご来店頂く日時をお伝えいただければスタッフが対応いたします。

もちろん発送による全国配送の対応も可能です。発送については基本的にヤマト運輸様での発送対応となります。
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Profile:
坂下大輔
コピンピア一筋21年。会社随一のアイデアと閃きで、社内外に向けたいくつもの企画を成功に導き社長賞を何度も受賞。知識よりも感覚で仕事をするのが好きで、簡単なデザインならデザイナーに依頼せずに自分で作成してしまうことも。社員旅行では宴会ではしゃぎ過ぎる一面も持ちながら、息子の影響でFC岐阜とお寺巡りにはまっている。日本酒が大好きなのに焼酎が飲めないという変わったお酒好き。