
創立記念や周年記念、年史や社史、または業績集など、記念誌には様々な種類があります。関係者への配布や保管を目的として冊子として作成する場合、その印刷や、製本方法にはどのようなものがあり、どういった形状が適しているのかを知っておくことが、外注先へ見積り依頼をする際のポイントにもなります。
また、せっかくの記念誌作成ということであれば、その仕様もそれなりに見映えが良く高級感を出せる製本にしたいところ。とはいえ予算なども限られている中で、どのようにすれば予算を抑えながら高級感を出すことが出来るのか、という所も悩みどころです。

今回はそんな「記念誌」の制作という面からポイントなどを簡潔にご紹介させて頂きます。
ページ数が多い冊子は「無線綴じ製本」
記念誌は、その内容から自然とページ数が多くなります。その場合の製本方法としてはやはり「無線綴じ」という製本方法になってきます。
「無線綴じ冊子」とは一般的に本文用紙を表紙でくるみ、背中部分を接着剤で綴じる形の製本方式となり、表紙で本文をくるむため、「くるみ製本」と呼ばれたりもします。
記念誌の作成に「無線綴じ製本」が適している理由はページ数だけではありません。無線綴じ冊子はその形状から、中綴じ冊子とは違い、「背表紙部分に文字が入れられる」というメリットがあります。
製本に高級感を持たせるには?
記念誌の作成に関して、高級感を演出できるポイントはいくつかあります。印刷用紙や表紙の用紙、製本の加工方法など、いくつかご紹介させて頂きます。
用紙にこだわって高級感をプラス
冊子印刷の定番「上質紙」
記念誌の印刷などで最も多く使用される用紙は「上質紙」という用紙です。
コピー用紙とは何が違うの?という声をよく聞きますが、上質紙はさらっとした手触りと白色度の高い用紙となっており、多くの書籍やテキスト等の本文として広く流通しています。コピー用紙のようなイメージですが、上質紙の原料は化学パルプ100%となっております。
コピー用紙は一般的に上質紙に対して「普通紙」と呼ばれます。
普通紙は、コピー機やプリンターなどで幅広く使われる用紙で、普段の生活の中で手にするプリントなどはこちらの用紙である事が多いでしょう。普通紙は資料や学校で配布するプリントなどに適している一方で、上質紙と比べると紙自体の耐久性は低く印刷の品質もそれほど高くありません。記念誌などの冊子を作成する際には普通紙よりも上質紙が向いている理由の一つです。
厚みとしては70kgが最も本文として使用される最も一般的な厚みとなります。もちろん厚みに関してはもっと厚い用紙を使用する事も可能ですが、本文用紙を厚くし過ぎると冊子が開きにくくなりますので本文用紙の厚みとしては90kgまでをおススメしています。
上質より高級感を出したいなら「書籍用紙」
記念誌や報告書、書籍の印刷用紙として、上質紙の他に「書籍用紙」というものがあります。
書籍用紙という名前ではなく代表的な書籍用紙として「クリームキンマリ」という用紙が挙げられます。
・書籍用紙の特徴 |
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さらっとした手触りでページをめくりやすい |
淡いクリーム調の色味の用紙が目に優しい |
落ち着いた印象で高級感が出せる |
塗工紙と比較するとカラーの発色は悪い |
黒の色が映え、モノクロ印刷に向いている |
特徴の部分でも述べたように書籍用紙と呼ばれる用紙は上質紙と比較すると全体的に淡く黄色がかった用紙となりますので、長時間見ていても白色度が低い事から目が疲れにくい、という特徴があります。長編の小説などの用紙で使用されているのも納得の用紙です。
高級感を出したい記念誌などに使用される用紙となります。
※書籍用紙を使用する場合の注意点
先にも述べたように書籍用紙と呼ばれる用紙は用紙自体に淡いクリーム調の色味がある為、写真やイラストなどのカラー印刷を行った場合、紙の色を拾ってしまう形になってしまうためおススメ出来ません。カラーページが入る場合には上質紙を選択すると良いでしょう。
高級感を出したい方向けの用紙、と言われると書籍用紙は非常に高級な用紙というイメージになってしまうかもしれません。一般的な上質紙と比較すると多少高くはなってしまいますが、コート紙、マットコート紙などの塗工紙と比較すると安価な用紙となります。
製本の加工で高級感をプラス
用紙以外での高級感の演出は製本の加工オプションで対応可能です。
もちろんハードカバーなどを使用して上製本で作成する、という方法もありますが、「上」というだけあって、なかなか高級な仕様となってしまいます。
では上製本ではなく、無線綴じ冊子などの「並製本」と呼ばれる方式で高級感を出すためにはどのような方法があるのでしょう。
並製本の無線綴じ冊子に高級感を持たせる加工オプションの代表的なものは以下の3つ。
・表紙へのPP加工 | ・見返しを付ける | ・扉紙を使用する |
①表紙へのPP加工
大切な記念誌を綺麗に保ち、さらに高級感を持たせる方法として、表紙へのPP加工という方法があります。PP加工とは紙の表面にPPフィルムと呼ばれる薄い透明なフィルムを貼る加工の事を指します。PPフィルムのPPとは「ポリプロピレン」を略した言葉になります。
PP加工のメリット① |
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フィルムによる表面の保護 |
PP加工を施すことで冊子の表面にキズが付きにくくなり、インクの剥がれや色味の劣化も防ぐ事が出来るため、長く保管しておきたい記念誌の表紙にはおススメの加工となります。 |
PP加工のメリット② |
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冊子の高級感アップ |
PP加工にはグロスタイプ(ツヤあり)とマットタイプ(ツヤ無し)の2種があり、どちらも冊子のイメージに合わせて高級感や落ち着きを持たせることが出来ます。 |
②見返しをつける
見返しについては以前のコラムでご紹介させて頂きましたが、冊子の表紙の内側と本文を繋ぐ紙の加工を指します。
見返しに使用する用紙に特に決まりはありませんが、一般的には本文の用紙よりも少し厚い紙を使用します。
上製本用の加工と思われがちですが、一般的な無線綴じ製本にも使用する事が出来、上記のPP加工を施した表紙の内側へ加工する事で、表紙の反りも防ぐ事が出来ます。
見返し加工のメリット① |
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冊子の耐久性アップ |
見返しを付ける事で表紙と本文のつなぎを強化する事が出来、尚且つ表紙の耐久性が上がる事になり、冊子全体の耐久性を上げる事が出来ます。 見返しは高級感アップの意味合いだけでなく、冊子印刷の強化にも一役買っているのです。 |
見返し加工のメリット② |
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冊子の高級感アップ |
色のついた用紙(色上質紙)や、特殊用紙を見返しとして使用する事で、グッと高級感を出すことが出来ます。 特に記念誌については、見返しを付ける事で、作り手のこだわりや、温かさ、柔らかさを冊子に持たせることが出来るのです。 |
③扉紙を使用する
無線綴じ製本における「扉(とびら)」とは、上にご紹介させて頂きました「見返し(みかえし)」と同様に無線綴じ冊子をグレードアップさせるオプションの加工の一つとなります。
印刷を行わない見返しに対して、扉には章のタイトルや題目が印刷されることが多くなり、印刷を行わない扉を遊び紙として使用する場合もあります。主に製本される文章の区切りとして、使用される扉ですが、あえて区切りとして扉を作成する事で、通常の冊子よりも制作側の「こだわり」を持たせることが出来、一味違った製本を作成する事が出来ます。
表紙を開いて一番最初になるページに配置する、いわゆる最初の扉の事を「本扉」と呼び、「中扉」は本文の間に挿入される扉となり、章の区切りなどの役割を持ちます。中扉を作成する事で小口側からでも容易に区切りを見つける事が可能です。
扉を使用するメリット① |
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冊子のこだわりを出すことが出来る |
扉は、冊子の制作者のこだわりを表現するポイントでもあります。余裕を持たせたページ校正となり、使用する用紙についても選ぶ事が出来、イメージに合った色や風合いで作成する事が出来ます。 |
扉を使用するメリット② |
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扱いやすさ、読みやすさアップ |
目次と連動した本扉や中扉を入れることにより、自分が見たい箇所をスムーズに探すことができるポイントになります。小口側からも区切りを確認する事が出来るため、自分が読みたい箇所からの読み出しも可能です。 |
ここでご紹介させて頂いた「高級感を出す方法」はあくまで一例となります。
表紙に写真やイラストが入っておらす、文字だけの表紙になる場合には表紙の用紙にレザックを使用する方法などもあります。レザックを使用した場合でも見返しの加工は可能ですが、上記にご紹介したPP加工については、凹凸部分に空気が入ってしまうなどの理由から対応は不可となりますので予め注意が必要となります。
予算に応じた製本方法を選びましょう
「記念誌を作りたいから高級なハードカバーで作成したい!」
と思っていても、実際に見積りを作成したら、ちょっと高いなぁ・・・となってしまう事はよくあります。ハードカバーの上製本だけが高級な仕様ではありません。ちょっとしたコツやポイントを抑えた冊子は見る人、受け取った人の印象を上げることが出来ます。
いつもの無線綴じにちょっとひと手間かけるだけで高級感のある素敵な記念誌を作成する事が出来るのです。
また、今回ご紹介した加工方法(表紙のPP加工や見返しの作成、扉の挿入)についてはあくまで通常の無線綴じに対する加工オプションになります。通常の無線綴じ冊子とは価格や納期も変わってきますので、担当スタッフや担当窓口で詳細を聞く必要があります。
レスキュープリント110番では、担当スタッフが製本の仕様をヒアリングした上で最適な方法でご提案、御見積を行っています。
もちろん相談、御見積は無料です。
お気軽にお問い合わせください。
レスキュープリントでは店舗での打ち合わせも可能です
レスキュープリントは岐阜県(岐阜市)と愛知県(名古屋市・一宮市)で合計3店舗を展開しています。東海地区のお客様に関しては店頭にて直接スタッフとご相談、打ち合わせが可能です。最寄りの店舗へお電話頂き、ご来店頂く日時をお伝えいただければスタッフが対応いたします。

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Profile:
坂下大輔
コピンピア一筋21年。会社随一のアイデアと閃きで、社内外に向けたいくつもの企画を成功に導き社長賞を何度も受賞。知識よりも感覚で仕事をするのが好きで、簡単なデザインならデザイナーに依頼せずに自分で作成してしまうことも。社員旅行では宴会ではしゃぎ過ぎる一面も持ちながら、息子の影響でFC岐阜とお寺巡りにはまっている。日本酒が大好きなのに焼酎が飲めないという変わったお酒好き。